TOKYOTO2008
「よし、東京に行こう!」
「「「「 ???!!! 」」」
「いや、急過ぎるでしょ。」
「授業どうするの」
「調整しようよ。とにかく行かない?行かないと始まらないでしょ。行けるメンバーで行こうよ。」
「私はパス。バイトと授業。」
「うーん。私もやめとくかな〜。」
「ウチ行く」
「別のチームだけど行くーっ!」
「クララは?どうする??」
「…このメンバーだと何しに行ったか分からなくなる気が…。うん、行くわ。それで、予算は?交通手段どうするの?」
「「「夜行バス!!!」」」
「えっ、何それ。」
今となっては、何目的で行ったのか覚えていない。
課題のためだけど、その課題のテーマも忘れてしまった。
いや、本当のところは、ただ単に東京に行きたかっただけなのだ。
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2008年。
夜行バスを初めて使って東京に行った。
それまで東京に行く手段は、新幹線か飛行機だけだと思っていた。
中学の修学旅行、鳥取⇆東京間は、飛行機での移動だった。離陸の瞬間、拍手が巻き起こった記憶がある。
京都駅八条口に集合。
マクドナルド前で待ち合わせをして、乗る前に腹ごしらえ。
私を含めた4人で行く。
言い出した張本人、今は会社員しながら音楽活動を続けドラマーをしているY。
アクセサリーを作り作家活動をしているK。
中退してアウトドアの学校に行ったり行かなかったりしてアウトドアの仕事に携わるP。
そんな個性的なメンバーで行く事になったのは、まだ10代の話だった。
初めての夜行バスは、興奮して眠りが浅い。
途中のパーキングエリアでは必ず目を覚ます。
都度都度降りては、僅かな時間でパーキングエリアグルメを楽しむ。
うん。今、覚えば若過ぎる。
割と虚弱体質だったとは言え、遠出効果でパワーアップしていた。
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AM6:00。
バスが東京に着いた。
降り立ち、空を見上げる。
曇天な空模様とコクーンタワー。
それが久しぶりに見る東京。
そしてこの先、数年見る事になる東京の最初の景色。
始まりは、いつも新宿のコクーンタワー。
通勤ラッシュに巻き込まれる前に山手線に乗る。
「いや〜本当にグルグル回るんだね、この路線は。」
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上野駅に到着する。
獣臭い。そうだ、動物園があるんだ。
Y「じゃあ、雄彦の世界を味わってくるから、2時間後に会おう!」
P「それじゃあ後でね〜」
K「ウチ、動物園行ってくるわ。クララ、どうする?」
私「あ〜美術館多いし、どこに何があるか把握したいから、散歩してきていい?じゃあ、皆、2時間に会おう。」
チーム課題のために来たのに、集団行動が出来ない我々は。
お互い、見てきたものを、後で言い合おう!
と言って解散。
私は上野駅で仕入れた上野マップを片手に散歩を始める。
当時ガラケー。
iPhoneを使ってGoogleMapを見ながら行動、という文化はまだない。
己の地理感覚を如何に発揮するか。幸いな事に地理は得意だった。
テクテクと歩く。
7月上旬だったと思う。
陽射しが暑い。
気だるい。
眠い。
美術館の場所を確認しつつ、しっかりと眠れていなかったから、ベンチに腰掛けてスッと寝そうになる。
動物園前を通る。中の様子は、後でKから見せて貰おう。彼女は一眼レフカメラを持っていたはずだ。
東京藝術大学の中に入って、ワクワクしながら探索する。
何か一つは中に入りたいなぁと思って、歩くと、トーハクこと東京国立博物館が聳え立っている。
「カッコいい!建物カッコいい!!」
とレーダーが反応して、吸い寄せられて中に。
集合時間ギリギリまで館内を探索して、国宝級の良い物を見た、そんな記憶がある。
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集合時間。
Kが1人で待っている。
「遅れてゴメン!あれ、YとPは?」
「まだ〜」
「「ゴメン!ゴメン!!ゴメン!!!雄彦、最高だったわーーーっ!!!」」
「「(こいつら、最高に楽しんでる…)」
4人それぞれが見てきた物を、写真を見せたり身振り手振りを交えて語らいながら、新宿へ向かう。
大学で教鞭をとる先生にお昼ご飯をご馳走になりに行くのだ。
「え〜っ、遊びにおいでよ〜。定食だけど、美味しいご飯奢ってあげるからさぁーっ。」
と出席確認をする際に「元気?飯食った??」と点呼をする彼は言う。
その後、もう1日滞在したけれど、夜に漫画喫茶に泊まって、夜な夜な漫画を読み更けった事以外の記憶は欠落している。
それ以降、一人で行ったり、複数人で行ったり、現地で合流したり。
年に5回以上は東京にいたように思う。
普段行かない地にも行くし、普段やらない仕事やプロジェクトもする。
自分じゃない誰かに変わる気がする。
今となっては、年に1,2回行く街になってしまったのだが、私にとっては未だに住むイメージが湧かない。
もしも、私が住む事になったら、一皮むける自分になるのか、全く違う自分になるのか。
いずれにしろ自分でなくなりそうな気がしてるけれども、そのままの様な気もする。
「良くも悪くも君は出会った頃と変わっていないよ」と目の前にいるそいつらに言われたのだから。
ふと、今度の東京で上野に行く事になって思い出して考えた話。
久しぶりのおのぼり楽しみである。