kuraruk.blog

見聞きして考えた事を綴ってます。趣味です。

風紋

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「風紋」という言葉は、この土地で過ごした身としては聞き慣れた言葉であった。
が、あまり実物を見る事は無い。

小中学校の近くに立つ大学の大学祭。
鉄板焼き屋の名前。
広報誌や学級通信の名称。

日常に「風紋」はあった。
しかし、実物は現地まで行かなければ、見る事はない。
鳥取砂丘なんて、地元に住んでいたとしても、そう易々と行くようなところではないのだ。

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久しぶりに「風紋」の姿を見る。
その姿を見て、なんだか私は感心していた。ポツリと呟く。

「風は遊ぶかのように模様を作るのだなぁ。」

嵐の翌日の砂丘は、
心地良いサラッとした風と日本海から吹きつける悪戯な潮風が駆け巡る。
二つの異なる風は、舞い遊ぶかのように大地を駆け、自然のうねりを、
残していく。記していく。刻んでいく。描いていく。

「二度は無いよ。これは、今、この瞬間だから出来るんだ。だからこそ、遊んでいる。」

そう言っているかのように、カメラを持つ私の身に、砂を打ちつける。
馬の背*1からシャッターをきる私に。
体勢を変えたとて、彼らは無邪気に大地を駆け巡っているのだ。

私は首から下げたカメラを、右肩から斜めに掛け直した。
なんだかカメラを構えているのが阿呆らしくなってきたのだ。
砂つぶがついたカメラを手元で軽く抱えながら、馬の背から、少し小走りで駆け降りる。

「そうそう。そんな調子!」
「良い感じじゃん!」

そうやって風達に言われているような気がして、ハッと気がつく。
より広大な景色が目の前に広がっていた。
何も無い場所には、何かがあるようだ。

*1:砂丘の一番高い場所。馬の背中のような起伏があるため、そう呼ばれている。